カテゴリ: 14.教育工学

以下のサイトには、「最初に問題が提示され、それを解決するために学習が進められるという、問題が学習を駆動する教育方法。」とある。
http://www.ed-ict.net/entry/pbl-learning
また、上記サイトに、その起源として、「医学教育では、生理学等の基礎科目の学習が臨床場面で活用されないという課題があり、これを解消するために産み出された」とある。

ITの世界でも同じである。ネットワークの教科書的な本をいくら読んでも、ネットワークを構築できない。ネットワークのトラブルを解決できない。
IT教育をしていても、「じゃあ、ネットワーク構成図を書いてみよう」「ネットワークを作ってほしいので、設計書を書いて」という課題を出すこともあるが、これが非常に難問のようだ。基礎学習も大事だが、PBLも実践的な力という意味ではとても大事だと思う。


藤本徹先生のシリアスゲーム。


この本を読みながら、私がIT教育で活用しているゲーミフィケーションについて、自分の考えをまとめていきたい。あくまでも自分のメモで、自分で振り返ったりするためにものである。
ただ、ゲームの要素を取り入れることが目的で、本格的なゲームとの融合ではないので、本書で述べられているような本格的なシリアスゲームを作ろうと考えているわけではない。

■シリアスゲームとは
シリアスゲームとは、piにあるように「社会の諸問題の解決のためにデジタルゲームを利用する」という考え方である。
言葉の定義は、それほど重要ではないと思う。ただ、とにかく、世界でもりあがっているようだ。

シリアスゲームとゲーミフィケーションは別物であり、以下にも解説がある。
https://gamification.jp/%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%A8%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84/

ただ、私に限っては、教育現場にいて、教育の場にゲームを活用するということを目的としているので、両者を同じような感覚で話をしたいと考えている。

ゲーミフィケーションの言葉は、昔からあると思う。任天堂のWiiFitなどもその代表だと思う。コナミのダンスダンスレボリューションもエクササイズとして海外で使われたようだ(p59)。
また、シュミレーションゲームのシムシティも授業で使われたこともあるようだ。もちろん、教育目的で作られたわけではないので、正規のシリアスゲームではないだろう。

http://msgport.net/
→Uberのシリアスゲームを覗いてみた。自由に操作ができるというより、シュミレーションゲーム的な感じである。私の目指しているものとは別ものでした。

■なぜゲーミフィケーションなのか →面白さ、相手を倒す、スコアが出る
私がIT教育にゲーミフィケーションを活用しようと考える目的についてである。
・p3にある「ゲーム」と「シュミレーション」の違いも理由の1つである。シュミレーションは「世界の描写における正確性(p4より)」が重視される。エンジニアという、ルーチン業務というよりは自ら考え、発案して仕事をする人にとっては、その通りにやるというシュミレーションは好まないと考えられる。むしろ、つまらないからやりたくないと考えるだろう。
・ゲーミフィケーションのメリットは、なんといっても、「面白い」が第一にくる。この本の「モチベーションの喚起・維持(p6)」がまさに該当する。なおかつ、「全体像の把握(p6)」「安全な環境(p6)」も納得できる。
全体像に関して、たとえばセキュリティのコンテンツを作る場合、IPAが出すセキュリティの10大脅威を網羅した内容にした。また、安全な環境に関して言うと、本来、企業のシステム環境は自由には変更できない。社内でしかるべきルール、手順に従う必要がある。だが、ゲーム上であれば、勝手にFWを止めたり、設定ファイルを変えたりできるのだ。
・ただ、これらは普通のハンズオン研修でもできるため、ゲーミフィケーションに特化した話ではない。やはり、面白さがあり、その面白さを増すのは、ゲームにありがちな「相手を倒す」「スコアが出る」「優勝なり勝ちを目指す」ところにあると思う。なので、単にKahoot!を使った早押しクイズをするだけでも、参加者は突然目の輝きを増してくる。★★

■デメリット →教育現場で受け入れられない
シリアスゲームは、それほど普及していないと思う。
・理由の一つに、p7にある「誤解」は少なからず残っているだろう。それは、学習は真面目にやる場なのに、なぜゲーム(という遊び?)という考えだと思う。この点は、ゲーム教育は主流にはなりえず、あくまでも教育の一部(たとえばきっかけ)にしかならないと私も思う。ただ、大きなきっかけになるはずだ。★★
 また、P108にあるように、ゲームに否定的な人に対し、ポジティブな面を啓蒙する地道な活動も必要である。
・この本のしっかりと書いてあるが、効果が無いということが最大の理由だろう。「多くの「教育用」ゲームは「チョコレートで包んだブロッコリー」とある。チョコレートという甘いお菓子で魅了しても、中身はブロッコリー。かつ、相性が悪い、そんな意味らしい。ゲームという甘い誘いであっても、中身との相性が悪ければ、もちろん、誰も食したいとは思わないはずだ。
・ここに記載されていることはなんともごもっともな話であるが、SEのIT教育に関して限って考えを述べると、ほとんど該当しない気がする。
たとえば、(8)のコスト面である。たしかに、一般的な授業は黒板にチョークで行われる。コストが安い。実際、ハンズオン研修を作るとなると、実機を準備して非常に時間がかかる。一人当たりの研修費用は1日10万円を越える。機材は高いので、仕方がない。しかし、今はクラウドの時代で、仮想環境が充実している。私が作ったものは、すべてクラウド化している。AWSを使うと、非常にコストが安い。たとえば、セキュリティのUTMをきちんと買うと、非常に高い。正規に買って、研修で回収しようとすると費用が高くなる。しかし、AWSのマーケットプレイスで時間売りをしてくれているので、研修の日数だけ動かせばいい。クラウドであれば、事前準備だけしておけば、当日はPCやスマホからアクセスしてもらえばいい。非常に便利だ。終わったら、サーバを閉じるだけである。★★
・ただ、内容が優れているか、また、効果があるのか、そしてその効果をどうやって計るのか、そのあたりが受け入れられるかどうかのポイントだと思う。★★

■ゲームという言葉を使うべきか。
IT業界の教育ではなく、一般的な学校教育の場合、先に述べたことに加えて、本格普及は難しいと思う。p56に集約されている気がするが、「ゲームに対する世論の否定的なイメージ」「教育効果の測定の難しさ」などが目についたデメリットである。
となると、ゲームという言葉を使うか使わないかは、判断した方がいい気がする。IT教育の場合は「ハンズオン」「実践研修」などという表現を使う。その方が印象がいいのではないか。

■シリアスゲームの会社
株式会社SGラボという、スクエアと学研によるシリアスゲームの会社があったが、今は無いようだ。
https://www.jp.square-enix.com/company/ja/news/2006/download/release_060322.pdf

■効果測定
まさしく、これが大きな課題である。そもそも、教育効果の測定そのものが難しいので、これはシリアスゲームに限ったことではない。あまり効果測定の議論に強く傾くと、どんな教育も弱腰になってしまう気がする。
この本のp69から記載がある。一言でいうと、効果測定は簡単ではない、となるだろう。
 私が考えている効果測定については、以下である。
・スコア →ゲームなのでスコアを出す。ここは、丁寧なスコアが必要だと改めて思った。研修なので網羅性を持った研修にし、そのコース関してジャンルごとに習熟度(達成度)をレポートするようにする。 →このあたり、しっかりとした理論というか体系を作っていかないと、普及しない気がする。★★
・あとは、ベタな話であるが、セルフチェックしかない気がする(どれだけ理解が進んだかを自分でアンケートに書いてもらう)→あまり科学的とは言えないが。

■MMO(Massively Multiplayer Online 大規模多人数同時参加型オンライン)
・今は、クラウドの時代であり、ゲーム機でゲームをすることよりも、昔にはなかったオンラインでのゲームが増えている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/MMORPG
・単に個人でやるというよりも、コミュニケーションをとったり、ネットで調べたりと、そう言うのも含めた研修がいいと思っている。
特に、全く知らない人と出会えるというのは貴重だ。同じ組織内だとどうしても考え方が偏ってしまう。全く斬新な人とゲームを通じて出会い、会話をし、なるほど、そうやってやるんだ!という出会いが、大きな成長になったりする。こういう出会いは、何かきっかけが必要だ。そして、共通の目的も必要。ゲームをチーム戦で行うことにより、積極的に、かつ真剣に出会いができると思うのだ。★★→コミュニティの部分が研究として価値があるのではないか。
・終わった後に、オンライン飲み会とか、いいですよね。

■ゲーム設計のヒント
・これは、良いコンテンツを作ることに尽きる。ポイントは、実践とマッチしていることである。なので、私の考え方は単純で、実践をそのまま持ってくればいいと思っている。その環境準備が大変なのだが、IT研修で、かつ、クラウドならできる。
・p86に「できの悪いゲームの特徴」が述べられているが、「画面の構成や操作方法がわかりにくい」などは、実際と同じものを使う、これが一番だと思う。その分、作りは雑になるし、ゲームとしての抜け穴ができるだろう。裏技というか、インチキができるのである。ただ、教育目的であれば、参加者にルールを守ってもらえばいいだけの話である。
・「学習要素とゲームプレイが分離している(p86)」の記述に関しては、これは、大事な問題である。というのも、個人によって理解度が違い、興味ある部分も異なったりしている。なので、画一的なことは難しい。私の場合は、問題を多くして、上級者は難問を解く、ジャンルは好きなものをやる、などという単純な対策にしている。
・p93に「従来のものから大きく仕様変更せずとも、少し手を加えることで、ユーザーとの関係性を変えて付加価値を高めることのできるデザインは可能であり、それがそこで開発されるシリアスゲームの価値を高めるということである」と記載されている。本当にそうだと思う。教育を大きく変えるのではなく、ちょっとしたアクセントとしてゲームを取り入れるだけで、研修というのは非常に楽しくなったりするものである。長い研修でそのまま終わるのか、最後に5分間のクイズ大会をするだけでも、参加者の満足度は変わるし、クイズで勝ちたいから、研修も真剣に聞いたりする。そういうちょっとした工夫が大事だと思う★★。
・p101にイントラクショナルデザイナーの記載がある。引用すると「シリアスゲームの開発においては、教育的要素とゲーム的要素の融合をいかに行うかが、ゲームの質を左右する重要な課題となる」とあり、その重要な役割を担うのが「インスtラクショナルデザイナー」というわけだ。

■促進する仕組み、コミュニティが必要?
・一人では大変だが、最初は一人が自分でやり切る覚悟で作らないとできないと思う。→そういう人材を発掘していくしかないのかもしれない
・枠組みやコミュニティを作っておいて、賛同者が勝手に仕上げるとうのが理想かもしれない。費用がかからないからね
・ただ、ビジネス的にどうするのか。ビジネスとしてやるのであれば、それはそれで成功するだろう。逆に、ビジネスでないとしても、仕組みがうまくできれば(たとえばWikipedhiaやLinux)、想像を超えるいいものができる気がする。
・ビジネスとして実施する場合は、p104にあるが、ハードルが高いと思う。方法としてはゲーム会社、コンテンツホルダーなどが苦心して進めることになるが、課題となるのは資金である。スポンサーが必要だったり、ベンチャーとしてベンチャーキャピタルやエンジェルから資金を調達する必要がある。→IT業界のベンチャーモデルがいいのではないか。
・Kahoot!なんかも、日本の会社が誰かが作ってもいいはずなんだけどなあとおもってしまう。機能はもっと単純でいい。

■マンガとゲーム
p119にもあるように、「マンガで学ぶ~」というのは世の中にありふれていて、マンガ=悪という考えはかなり薄れていると思う。一方。ゲームはどうか。マンガほどの地位が確立されていないことであろう。桃太郎電鉄で地理を学べるといっても、ゲームによるマイナス面のわりに、得られる利点が少ない。
ゲーム要素を入れるのは大賛成で、ただ、ゲームという言葉を使うことは議論が必要かなあと。マンガとゲーム、どちらが中毒性が高いかというと、ゲームだと思う。それは、既に述べたが、相手を倒したり、スコアを競うなどの競争性が一因だと考える。であれば、その力をうまく教育にも結び付けられたらと思う。

■全く違う発想、異文化を取り入れる段階?
著者のあとがきに、「違う立場の研究者からシリアスゲームをみると、また違った捉え方になると思われる」「さまざまな視座からシリアスゲームが捉えられていくことを期待している」とある。教育に答えは無い。いろいろな人が、全く違った考えで進め、ときに1つの方向に向かっていくことで、斬新なものでったり、大きな発見になるのではないかと思う。私も一石を投じられれば幸いである。★★

広い意味でのゲームの教育への活用という意味では、社内コンテストもある。

以下は杵屋さん。こういうのもゲームの要素を取り入れている。
https://job.career-tasu.jp/2022/icorp/00009949/
【うどん打ちコンテスト】
うどん打ちの技術を競うコンテストです。チャンピオンになるとグルメ杵屋をアピールするさまざまな場所でうどん打ちをしていただきます。
【接客ロールプレイングコンテスト】
外部のコンテストに習い、お客様が来店してから帰られるまでの対応を行ないます。お客様とは打ち合わせ無しですので、実際に求められたことに対し、どのように対応をするかを競います。エリア代表になった者は大阪と東京で行なわれる決勝戦に出場します。

全国レベルでいうと、ユーザ協会の電話応対コンクールというのもある。

効果はどうなのであろうか。これでモチベーションを上げる人もいるだろうし、目標になる。きちんと評価できるのか、コンテストさえいい結果であれば、それ以外のところ(思いつきだが、コンテストの評価では表れない部分)がおろそかになるなどのデメリットはないか。どういう点を注意すればいいのか、なども研究で明らかにできればいいなあと思う。

「ゲームと教育・学習」(ミネルヴァ書房」の「はじめに」に、「教育工学とは、たとえば、人間の学習をより効果的に行うにはどうしたらよいか、という教育の場における問いに解を示すため、行動科学、心理学、認知科学、情報科学、文化人類学、学習科学、生理学などの知見を踏まえ、応用し、さまざまな研究方法を用いて知見を積み重ねることを目的とした実践指向の学術的な研究領域」とあります。



これを読みながら、自分がやろうとしているIT教育のゲーミフィケーションについて考えていきたい。

■知見
・p2 モノポリーは、「開発された当初は、資産所有や徴税などの経済概念の教育のために開発された」
・p4 ゲーム教育・学習の歴史的変遷
 エデュティメント→シリアスゲーム→ゲーミフィケーション

■ゲームの研究について
・p5に「娯楽ゲーム的な演出やクイズを取り入れた程度にとどまるのも珍しくない」とある。私はこちらに寄っているが、線引きは難しく、本書で述べられているような本格的なゲームの開発だけではなく、ゲームの要素を入れていくという研究が進んでもいいのではないか。★★
→たしかに、単にクイズを入れるだけというのは、あまり意味が無い。ゲームを通じて、ゲームでしか学べない経験をするのが、ゲームの研究だと思う。授業の最後にゲームを入れて、生徒のモチベーションを上げることは大事である。それはそれで、そういう研究も必要だ。それとは別に、ゲームならではのこと。私の場合は、セキュリティの実機のシュミレーション環境を作り、日常業務ではできないし、本では学べない経験をしてもらう。もちろん、全部の機材をそろえれば、構築そのものはできる。でも、セキュリティで言えば、攻撃されることは無いので、攻撃されるというゲームでしかない環境を作り、学んでもらう。ネットワークで言えば、トラブルが発生する。(LANケーブルが切れたり、ループしたり、故障したり、VLANを追加する必要があったり)。実際に構築するのは大変で、クラウドにプラットフォームがあればいいのではないか。→その仕組みづくりをサポートするものが必要?

・p10に、「娯楽ゲームはプレイヤーを強制ではなく、自発的に楽しんで参加させることが前提」とある。ゲームの魅力はまさにここだと思う。勉強という、やや嫌なものを、自発的に学ぶ。そして、それがきっかけとなって、本格的な学習につなげることこそ、教育にゲーム要素を取り入れる意義ではないか。★★

■ゲーム学習導入の障壁
p13に記載がある。1位は「時間不足」、2位は「コストの問題」、3位が「技術面のリソース問題」とある。たしかにそうだ。これは、ゲーム学習だけでなく、どんなものを作る場合でも、時間、金、人材や知識、技術がなければできない。
4位以降に、ゲーム学習ならではの課題が登場する。具体的には4位に「カリキュラムとの整合性」である。
なので、ゲーム学習を「本格的に」進めるのはかなりハードルが高い。小さなところからスタートする以外はないのではないか。
ちなみに、「保護者サイドの無理解」は9位と、低かった。





↑このページのトップヘ