1.RASに関する用語

RASやRASISという言葉があります。RASはReliability(信頼性),Availability(可用性),Serviceability(保守性)の三つの頭文字を取ったものです。
・Reliability(信頼性)の代表的な指標はMTBF(平均故障間隔)
・Availability(可用性)の代表的な指標が稼働率
・Serviceability(保守性)の指標の一つにMTTR(平均修理時間)
RASISは、これに、Integrity(完全性)とSecurity(機密性)を加えたものです。ここでは、RASに関連する用語を整理します。

① MTBF(Mean Time Between Failure)

 平均故障間隔のこと。meanは平均値を意味するので,直訳すると「故障と故障の間の平均時間」となります。これを言い換えると「故障していない時間」となり,稼働時間とも同義になります。

② MTTR(Mean Time To Repair)

 平均修復時間のこと。直訳すると,「修復のための平均時間」となります。これを言い換えると「修理している時間」となり,故障時間とも同義になります。

③ 稼働率

 稼働率=MTBF÷(MTBF+MTTR)で表されます。稼働率という言葉のとおり,システムがどれだけ稼働しているかの割合です。

④可用性(Availability)

可用性は「システムをどれだけ利用できるか」を表します。可用性を表す代表的な指標が稼働率です。例えば,システムの稼働率99%であれば,100時間利用して1時間が停止している状態です。留意点として,実際に重要なのは,定められたサービス提供時間内における稼働率です。サービス提供時間外にシステムが停止していても業務に影響がないので,稼働率の計算からは除くべきです。

過去問(H22NW午前1問21)を解いてみましょう。

問21 サービス提供の時間帯を7:00~19:00としているシステムにおいて,16:00にシステム故障が発生し,サービスが停止した。修理は21:00までかかり,当日中にサービスは再開されなかった。この日の可用性は何%か。
ア 25     イ 60     ウ 64     エ 75






【正解】エ
可用性は、システムの稼働率です。本来は7:00~19:00の12時間の稼働時間があるべき姿です。それに対し、16:00以降19:00までの3時間は利用できていません。
実際の稼働時間は9時間です。よって、可用性は9÷12=75%です。

⑤ 信頼性(Reliability)

可用性と信頼性の違いを述べてください。
情報処理試験_午前 

どちらも”稼働率”ですから、同じではないのでしょうか



可用性と信頼性を混同しがちですが,明確に分けて理解すべきです。
信頼性は,「システムがどれだけ故障に強いか」を表します。どちらも同じことを言っているようですが,信頼性は“故障”の視点での用語に対し,可用性は“利用可能”の視点での用語です。信頼性を表す代表的な指標はMTBF(平均故障間隔)です。例えば,MTBFが8,000時間であれば,平均8,000時間は故障なく利用できます。

また,信頼性を高めることと可用性を高めることは一致する場合もあれば,そうでない場合もあります。例えば,障害が発生しないように日常点検や予防保全を行うと,信頼性が高まると同時に可用性も高まりませんす。しかし,システムを二重化する対策は,1台1台の機器の故障率を下げるわけではありません。個々の信頼性には変化はありませんが,システム全体の可用性を高めることになります。

⑥故障率

故障率とは,時間当たりの故障回数を表します。計算式は,1÷MTBFによって求められます。注意すべきは,故障率=1÷(MTTR+MTBF)ではないことです。
例を挙げます。100時間の間に5回故障するとします。1回の故障修理時間を1時間とします。すると,MTTR=1時間,でMTBF=19時間となります。
ここで,故障率=1÷(MTTR+MTBF)=1÷(1+19) =0.05としてよいでしょうか。稼働していない間(つまり故障している間)は故障しないのが当たり前です。よって,故障率の計算に故障時間であるMTTRを含めません。故障率=1÷MTBF=1÷19=0.052となります。

過去問(H19春SM午前12)を解いてみましょう。

問12 システムの稼働モデルが図のように表されるとき,システムのMTBFとMTTRを表した式はどれか。ここで. tiはシステムの稼働時間。riはシステムの修理時間を表すものとする(=l,2,…。n)。
aaa






【正解】イ
MTTRは簡単だと思います。修理時間の平均を求めるので、r1からrnの平均値を求めます。
では、MTBFはどうでしょう。
6d1e1c71 

MTBFを直訳すると「故障と故障の間の平均時間」ですよね。
図を見ると、ri+ti の間隔で故障していますから、
MTBF=(r1+t1)から(rn+tn)の平均値だと思います。


ここがよく間違えるところですので、注意しましょう。
故障と故障の間は正しいのですが、修理している時間は含まれません。稼働している時間においての、故障間隔です。ですから、以下の式です。

MTBF=t1からtnの平均値

この問題の正解は、イです。


応用情報技術者試験のシラバスでは、「システムの評価指標」に関して、以下の記載があります。

(2)システムの信頼性特性と評価
① RASIS
システムを評価する際の評価項目となるReliability(信頼性),Availability(可用性),Serviceability(保守性),Integrity(完全性),Security(安全性)とその指標を理解する。

② 信頼性指標と信頼性計算
MTBF,MTTR,稼働率などシステムの信頼性を評価する際の評価項目とその指標,並列システム,直列システムの稼働率の計算方法を理解する。

用語例 バスタブ曲線

■システムの信頼性

①信頼性を評価する指標には、以下があります。
a)稼働率
b)MTBF(平均故障間動作時間)
c)MTTR(平均修復時間)

②信頼性の向上
用語はたくさんあります。
ただ、全部を覚える必要はなく、フェールセーフ,フォールトトレラント,フールプルーフあたりを理解しましょう。

2.RASに関する用語の過去問を解いてみよう

(1)H29秋

問13 MTBFを長くするよりも,MTTRを短くするのに役立つものはどれか。
ア エラーログ取得機能     イ 記憶装置のビット誤り訂正機能
ウ 命令再試行機能       エ 予防保守






【正解】ア
エラーログを分析すれば、故障の原因がよくわかり、復旧を早めることができます。
それ以外の選択肢はMTBFです。特に予防保守をすることで、故障する確率を減らすことができます。

(2)H29春

問15 図に示す二つの装置から構成される並列システムの稼働率は幾らか。ここで,どちらか一つの装置が稼働していればシステムとして稼働しているとみなし,装置A,Bとも,MTBFは450時間,MTTRは50時間とする。
問15
ア 0.81     イ 0.90     ウ 0.96     エ 0.99

装置A(またはB)の稼働率を求めましょう。稼働率は、稼働している(=修理していない)割合です。
MTBF/(MTBFMTTR) =450/(450+50)=0.9

問題文には「どちらか一つの装置が稼働していればシステムとして稼働している」とあります。
よって、装置Aと装置Bが両方稼働していない(1-0.9)×(1-0.9)=0.01以外は、稼働しているので、1-0.01=0.99がこの並列システムの稼働率です。
【正解】エ

(3)H28秋

問14 あるシステムにおいて,MTBFMTTRがともに1.5倍になったとき,アベイラビリティ稼働率)は何倍になるか。
28-問14






【正解】エ

(4)H27秋

問15 MTBFが x 時間,MTTRが y 行時間のシステムがある。使用条件が変わっだので,MTBFMTTRがともに従来の1.5倍になった。新しい使用条件での稼働率はどうなるか。
ア x,yの値によって変化するが,従来の稼働率よりは大きい値になる。
イ 従来の稼働率と同じ値である。
ウ 従来の稼働率の1.5倍になる。
エ 従来の稼働率の2/3倍になる。






【正解】イ

(5)H27春

問15 ノードN1とノードN2で通信を行うデータ伝送網がある。図のようにN12間にノードNを入れてA案,B案で伝送網を構成したとき,システム全体の稼働率の比較として適切なものはどれか。ここで,各ノート間の経路(パス)の稼働率は,全て等しくρ(0<ρ<1)であるものとする。また,各ノートは故障しないものとする。
H27h-問15

ア A案,B案の稼働率の大小関係は,ρの値によって変化する。
イ A案,B案の稼働率は等しい。
ウ A案の方が,B案よりも稼働率が高い。
エ B案の方が,A案よりも稼働率が高い。






【正解】エ

(6)H26秋

問14 2台のプリンタがあり,それぞれの稼働率が0.7と0.6である。この2台のいずれか一方が稼働していて,他方が故障している確率は幾らか。ここで,2台のプリンタの稼働状態は独立であり,プリンタ以外の要因は考慮しないものとする。
ア 0.18     イ 0.28     ウ 0.42     エ 0.46






【正解】エ

(7)H26春

問13 キャパシティプランニングで行うことはどれか。
ア コンピュータシステムで,操作ミスや設計上の不具合などによる障害が発生することをあらかじめ想定し,被害が最小限になるように対策を検討する。
イ コンピュータシステムに効率よく投資するために,性能,経済性及び拡張性を考えてシステムの構成を決定する。
ウ コンピュータシステムのデータを適切に保護する観点から,誰にデータのアクセスを許可するか,データを暗号化して格納するか否かなどを決める。
エ コンピュータシステムを複数台の機器で構成し,機器のうちの1台が故障しても処理を続行したままで修理や故障した機器の交換ができるようにする。






【正解】イ

(7)H26春

問15 システムの信頼性指標に関する記述のうち,適切なものはどれか。
ア MTBFMTTRは,稼働率が0.5のときに等しくなる。
イ MTBFは,システムが故障してから復旧するまでの平均時間を示す。
ウ MTTRは,MTBF稼働率を掛けると求めることができる。
エ MTTRは,システムに発生する故障と故障の間隔の平均時間を示す。






【正解】ア

(8)H25秋

問17 稼働率がa (0 < a < 1)の装置三つを用いて図のようにシステムを設計するとき,システムの稼働率が装置単体の稼働率を上回るものはどれか。ここで,並列に接続されている部分は,いずれかの経路が稼働していればシステムは稼働しているものとする。
H25a-問17
ア AとB  イ AとC
ウ BとC  エ 全て






【正解】イ

(9)H25春

問16 3台の装置X~Zを接続したシステムA,Bの稼働率について,適切なものはどれか。ここで,3台の装置の稼働率は,いずれも0より大きく1より小さいものとする。
H25h-問16
ア 各装置の稼働率の値によって,AとBの稼働率のどちらが高いかは変化する。
イ 常にAとBの稼働率は等しい。
ウ 常にAの稼働率が高い。
エ 常にBの稼働率が高い。






【正解】エ