障害や誤操作によってデータが失われることを防ぐために,データのバックアップが必要になります。バックアップの方式を次に述べます。
フルバックアップ
フルバックアップは、毎回,すべてのデータをバックアップする方式です。バックアップ時間は長くなり,保存するデータ量も増えますが,バックアップする仕組み、復旧手順はシンプルです。
差分バックアップ
差分バックアップは,フルバックアップのデータとの差分のみをバックアップすることです。例えば,毎週日曜日にフルバックアップを取得し,月曜日から土曜日に差分バックアップを取ります。こうすることで,フルバックアップに比べて、バックアップにかかる時間短縮とデータの保存領域の削減が期待できます。
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増分バックアップ
増分バックアップは、差分ファイルの差分をバックアップすることです。差分バックアップよりも更に,バックアップにかかる時間短縮とデータの保存領域の削減が期待できます。
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また、世代管理という言葉があります。世代を管理するという言葉のとおり,バックアップの複数のデータを管理します。例えば、バックアップをフルバックアップですべて一つのテープに上書き保存している場合は,1世代のみだけの管理になります。それを2本のテープに交互に保存した場合,2世代の管理が行えます。こうしておけば、少し古いデータに戻すことができます。

過去問(H20春SM午後1問1)を見ましょう
〔バックアップ運用の見直し〕
 E社のシステムで適用可能なバックアップ方式には,表2に示すように,現在適用している“通常バックアップ”のほかに,“増分バックアップ”と“差分バックアップ”がある。

表2 バックアップ方式
方式 バックアップ時の処理 ファイル回復時の処理
通常バックアップ マスクファイルをすべてバックアップする。 通常バックアップで取得したファイルをリストアする。
増分バックアップ 前回の通常バックアップ又は増分バックアップ以降に変更されたファイルだけをバックアップする。 通常バックアップで取得したファイルをリストア後に,[  b  ]をリストアする。
差分バックアップ 前回の通常バックアップ以降に変更されたすべてのファイルをバックアップする。 通常バックアップで取得したファイルをリストア後に,[  c  ]をリストアする。
  
  Y氏は新しいバックアップの運用方法として,次の二つの運用案を検討することにした。
(1)運用案A: 土曜日の夜間に“通常バックアップ”を行い,月曜日から金曜日の夜間は“増分バックアップ”を行う。
(2)運用案B: 土曜日の夜間に“通常バックアップ”を行い,月曜日から金曜日の夜間は“差分バックアップ”を行う。
 Y氏は二つの運用案について,次の3点を検討した。
① バックアップの処理時間
 バックアップの処理時間について調査したところ,“通常バックアップ”が70分で,“増分バックアップ”が平均で10分,“差分バックアップ”が平均で35分掛かることが分かった。
② バックアップしたファイルの管理運用
 バックアップしたファイルは,1日単位で外部記憶媒体に保存する。
③ 障害発生時のファイル回復時間
 ファイル回復時の処理で,各バックアップ方式のリストアの処理時間は,それぞれバックアップの処理時間と同一である。

〔ファイル回復時間の短縮〕
 これらの運用案では,バックアップの処理時間が短くなり,オンライン業務の開始までの余裕時間を確保することができるが,障害発生時のファイル回復時間が現行より長くなってしまう。そこで,Y氏は,ファイル回復時間を更に短縮するために,運用案A又は運用案Bの変更を検討することにした。

設問2 [バックアップ運用の見直し]について,(1),(2)に答えよ。
 (1)バックアップの処理時間について,運用案Aと運用案Bのそれぞれの案を採用した場合の,1週間のバックアップの処理時間合計(分)を求めよ。
 (2)ファイル回復時の処理について,表2中の[  b  〕,[  c  ]に入れる適切な字句を,それぞれ25字以内で答えよ。
正解は、
(1)
運用案A 120
運用案B 245

(2)
b 古い順に増分バックアップで取得したファイル
c 最新の差分バックアップで取得したファイル
です。

設問3  〔ファイル回復時間の短縮〕について,ファイル回復時間を90分以内とするために,修正の少ない運用案は運用案Aと運用案Bのいずれか。答案用紙の“運用案A・運用案B”のいずれかの文字を○印で囲んで示せ。また,その変更内容を,20字以内で述べよ。ただし,土曜日は通常バックアップを行い,1週間のバックアップの処理時間の合計が200分を超えないものとする。
正解は、
運用案 運用案A
変更内容 水曜日をバックアップに変更する。
です。