滋賀県に国際空港を建設するというプロジェクトが仮にあったとします。このプロジェクトに必要な工期や人員はどれくらいでしょうか。即答は難しいですよね。
プロジェクトを管理する際に、作業を管理できるレベルに細分化しておかないと、必要な人員やスケジュールなどを立案できません。そこで、WBSによって、作業を管理できるレベルに細分化します。

【参考】WBSを使用する目的
過去問(H28春FE午前問51)では、「ソフトウェア開発プロジェクトにおいてWBS (Work Breakdown Structure)を使用する目的」として「作業を階層に分解して,管理可能な大きさに細分化する。」と述べられています。
過去問(H17秋PM午後Ⅱ問2)の出題趣旨では、「プロジェクト計画では,スコープ定義段階で作成されるタスク構成(WBS)を基に資源や要員の計画を行いながらスケジュールを作成し,稼働開始時期を定める。」と述べられています。

応用情報のシラバスを見てみましょう。
WBS は,プロジェクト計画に基づき,プロジェクトで作成する成果物や実行する作業を階層的に要素分解し,スコープ全体を定義し表現した構造であり,予算,工程,品質などの計画立案や管理に活用されることを理解する。
IPA応用情報技術者試験シラバス より引用
http://www.jitec.jp/1_13download/syllabus_ap.pdf
WBS(Work Breakdown Structure)を直訳すると、Work(仕事)をBreakdown(分解)したStructure(構造)です。過去問では、「プロジェクト目標を達成し,必要な要素成果物を生成するために,プロジェクトが実行する作業を階層構造で記した文書(H25春PM午前2問4不正解選択肢)」「プロジェクトマネジメントにおいて計画を立てる際に用いられる手法の一つであり,プロジェクト全体を細かい作業に分割し,階層化した構成図で表すもの(H24春IP問41」と述べられています。

WBSの例が過去問(H26春FE午前問52)に掲載されているので紹介します。
※問題文は「図のように,プロジェクトチームが実行すべき作業を上位の階層から下位の階層へ段階的に分解したものを何と呼ぶか」です。
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②ワークパッケージ
WBSは、プロジェクトにてコントロール可能な単位まで細分化されます。この最小の単位をワークパッケージといいます。どこまで細かくするかはプロジェクトの規模にもよります。あまり細かくし過ぎると、逆に管理が大変になります。

③アクティビティ
ワークパッケージをさらに作業ベースにしたものがアクティビティです。過去問では、「ワークパッケージは、更にアクティビティに分解される」(H22ST午前1問18)と述べられています。
以下の過去問(H22春IP問91)を例にします。
問91 作業内容定義では,作業分割で作成したWBSを基に,担当,工数を加えた表を作成した。次の表はその一部を示したものである。画面設計での作業5の作業間には次の図に示す順序関係があるとき,画面設計のクリティカルパスの作業日数はどれか。図では,作業の流れを矢印で,作業名を矢印の上又は下に示している。
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この問題の表にあるように、作業4にある画面設計や帳票設計というコントロール可能なワークパッケージにおいて、「画面一覧」を作ることや「画面フロー」を設計することなどの作業(アクティビティ)があります。
作業(アクティビティ)およびクリティカルパスに関しては、このあとのタイムマネジメントで解説します。
※厳密には、この問題では、作業5がワークパッケージとして書かれています。が、開発規模が小さい場合には、作業4がワークパッケージ、作業5がアクティビティと考えてもいいでしょう。

または、画面一覧を作るワークパッケージにおいて、画面設計、コーディング、テストなどの各工程をアクティビティ(作業)と考えることもできます。(こちらの方が一般的かと思います)

2.WBSの書き方について
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WBSを書けと言われましたが、書き出すとやることがたくさんあって、このペースでいくと1000以上になっちゃいそうです。かなり悩んでます。


WBSの書き方だけど、ポイントは2つある。一つはアウトプット(成果物)をイメージして書く。「~と打ち合わせする」「~に依頼する」「物品を発注する」「受領する」「メールを送る」など、仕事を細分化するときりがない。まずは作成するアウトプットベースで考える。プログラム開発であれば、画面や機能であろう。システム構築であれば、基本設計書、詳細設計書、Config、構築などのドキュメントや構築という成果をベースに考える。

もう一つのポイントは今述べたようなやり方で、大きなカテゴリで作成し、徐々に細かくブレークダウンする。そうすることで、わかりやすくなるし、MECEという観点で、漏れやダブりもなくなる。
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作り方はよくわかりました。では、次にどのレベルまで細かく書けばよいのですか?

細かければよいと言うものではないことは分かるでしょう。注意点は細かくしていっても、アウトプットベースであることを忘れないこと。
例えば、「基本設計書」という工程を細分化していって、「基本設計書のラフ作成」「レビュー」「お客様確認」などのアウトプットに関係ないことを書き出したらきりがない。細分化するとすれば製品ごとに分けることや、「物理設計」「論理設計」などで分ける。(※基本は前者)
WBSはセンスがいる。変なのを書くと会議で総つっこみが入るので、色々な例を参考にして、バランスの良いWBSを書きましょう。

■H27秋AP午前
問51 WBS作成プロセスが含まれるマネジメントプロセスはどれか。
ア プロジェクトコストマネジメントプロジェクト
イ スコープマネジメント 
ウ プロジェクト品質マネ ジメント
エ プロジェクトリスクマネジメント
【正解】イ

■H26秋AP午前
問51 WBS (Work Breakdown Structure) を利用する効果として,適切なものはどれ か。
ア 作業の内容や範囲が体系的に整理でき,作業の全体が把握しやすくなる。
イ ソフトウェア,ハードウェアなど,システムの構成要素を効率よく管理できる。
ウ プロジェクト体制を階層的に表すことによって,指揮命令系統が明確になる。
エ 要員ごとに作業が適正に配分されているかどうかが把握できる。
【正解】ア

■H24秋AP午前
問51 WBS (Work Breakdown Structure)を利用する効果として,適切なものはどれ か。
ア 作業の内容や範囲が体系的に整理でき,作業の全体が把握しやすくなる。
イ ソフトウェア,ハードウェアなど,システムの構成要素を効率よく管理できる。
ウ  プロジェクト体制を階層的に表すことによって,指揮命令系統が明確になる。
エ  要員ごとに作業が適正に配分されているかどうかが把握できる。
【正解】ア